扉がスーッと開いて
現れた人に目を見張った

だって。
その人は大ちゃんのお母さんの飛鳥さんだったから


「・・・・・・っ」



咄嗟に掛け布団で顔を隠そうとしたけれど
両手で布団を掴んだところで背中に痛みが走って断念

その間に飛鳥さんはベッドの側まで近づいていたようで、すぐ間近で声が聞こえた
 


「蓮ちゃん・・・ごめんなさい」


ハッとして目蓋を閉じる


飛鳥さんの声を聞くのは六年振り
懐かしいと思うと同時に苦しくなった


「・・・・・・いいえ」


「蓮ちゃんに怪我をさせてしまって
私、どうやってお詫びをすればいいか」


飛鳥さんの震える声に
意を決して目蓋を開いた


「私が飛び出したから悪いんです
だから・・・謝らないで」


「ううん、そうはいかないの
車を運転するなら想定の範囲内なんだもの」


あの時、歩道には沢山の小学生が居た
だからこその結果として
簡単には引き下がってはくれない姿勢に気持ちが滅入る


「あの子もとても心配してるの
二週間前にもあの子の所為で蓮ちゃんに怪我をさせたと聞いてるわ」


「あの時は大ちゃ」


大ちゃんと言いかけて淀む
あの頃の呼び方で良いのだろうか

未だに色褪せない大ちゃんとの思い出が先に進む邪魔をする


「あの時は人並みに押されてのことだったので
誰の所為でもありません」


二回とも関わることになってしまったけれど

それは決して本意ではない

その気持ちが伝わったのか
飛鳥さんは肩を落とした