「じゃあさ、どうして世界平和がいいの?」 いつまで喋ってんのー、とお母さんの扉の向こうから声がしました。 ちょっと怒った声だったけど、きっと扉にぶつかってあっちに跳ね返っています。 「どうしてだと思う?」 うーん、と僕は考えました。平和だと、みんなが幸せになるから? 「それもあるけど、」 お父さんはそっと僕に耳打ちしました。耳に息がかかってくすぐったくて。 トン、トン、と大きな手のひらが秒針と 同じリズムを刻みました。