「……そうして彼は、人の代わりに傷つくという能力のせいで、そんな罪を犯してしまったんだ」

2つの目が、3つの顔に貼りついて、こっちに向けられる。

橋の下の暗がりで何かこそこそと悪いことをするように、俺たちはコンクリートの堤防に腰かけている。

俺は紙芝居屋みたいに、その視線を浴びながら時間をかけて語った。

その罪が善か悪か、まだ未熟で幸福な3人の中学生に伝え、想像してほしかった。



「その人、今はどうしてるの?」

襟足の長い、最も幼げな少年が、尋ねてくる。
俺は口を開きかけて、少しだけ首を傾け、微笑んだ。


残りの二人が、顔を見合わせて、その瞬間ぶっと吹きだす。

「いやまじお前笑うなよ」
「いやいや我慢してたから」
「お前がこっち見てきたせいだろうが!」

肩を小突き合い、お腹を抱えるようにして体を前後に揺り動かす。

ひとしきり笑った後、あーあ、と息をついて、片方がこっちに声を投げた。

「作り話おつ!」

俺は黙って微笑む。

もう片方が、あぐらをかいていた足を前に投げ出すようにして、退屈げに背伸びをする。

「エスパーなんて絶対ないね。安っぽい漫画みてえ」

「なんだっけな『今、生きるのが辛い人、話をしませんか。君に伝えたいことがあります』?」

スマホでうたい文句を読み上げながら、学生鞄を手に取って立ち上がる。

「マジ最悪、ズボン濡れた」とこぼしながらもう一人もそれに続く。



「なにが @katariya だよ」



吐き捨てるように言って、行こうぜ、と鞄を回す。

最後の一人が、のろのろと立ち上がる。

俺は微笑んだまま、その背中を見送る。

春の日差しを学生服の背中いっぱいに浴びて、大股で堤防を登って行く。


スポットライトの当たらない舞台袖で、俺は橋の下の冷んやりとした空気の中にたたずむ。