マコトの声がする。すぐそこにいるんじゃないかと、俺はゆっくり公園の端から端までを見渡す。

首を回して海を照らす、灯台の光みたいに。

「マコトくんはね、眠れない子供が夜を持て余すように、延々と話しているよ。きっと、ずっと誰かに話したかったんだね」

泉からあぶくが沸き立つように胸の奥から熱い何かがこみ上げて溢れた。

誰かの気持ちになるとはこういうことなんだと知った時、灯台の光は静かに涙を流した。

「マコトくんが帰ってくるのを、どうか、待っていてあげてくれないかな」

光が零れる。縦に一すじ、二すじ。

「私ばかり話して申し訳なかったね。次は、ゆっくり、時間をとって君の話を聞かせてください」

その人は手首の時計を確認して、立ち上がってお尻の砂をはたいた。

そして折り畳んだ背広を腕にかけたまま、深々と頭を下げて行ってしまった。

首を持ち上げて、その顔を見ることがどうしてもできなかった。






間延びしたような長い蝉の鳴き声が、止まったかと思えば、また響き渡る。

泣いているみたいだ。姿の見えないその声を聴きながら思った。

乾いてぱりぱりになった顔を指先で雑に触りながら、歩いた。
マコトについて河川敷に行ったのと同じ風景が、今日は帰り道だった。


川の表面をみずみずしい光の粒が踊る。

さっきまで公園ではしゃいでいた子供たちも、昼食を食べに一度家に戻った頃だろうか。

川は続いていく。橋の下だけ暗い影を落としても、それを抜ければまた同じ光の粒を纏って。