うーん、と僕は考えました。どうしてお父さんが世界平和を望むのかを。

正解だと頭を撫でられたくて懸命に答えを探したけれど、幼い僕には難しすぎる質問でした。

「平和だと、みんなが幸せになるから?」

それもあるけど、とお父さんはそっと僕に耳打ちをしました。

「マコト、お父さんはな、」

耳元で囁く低い声が、髪の間をすり抜けて、くすぐったくて。

思わず吹きだして身をよじりました。
お父さんの親指が、僕の頬の一番柔らかいところをさするように撫でます。

「お前が幸せに生きられるように、世界を平和にしたいんだ」

大きな手の平が僕の体を抱き寄せました。

掛け布団を境にして、お父さんのおでこが、僕のおでこにぴったりとくっつきました。

「お前ひとりが、お父さんにとっては、世界の全てなんだよ」