公園のベンチに腰掛ける。

キャップ帽を被った男の子が二人、水道の蛇口を上向きにして、出てくる水を手のひらで塞いでいる。

行き場を失くした水が飛沫となってそこら中に勢いよく飛び散り、Tシャツをずぶ濡れにして笑っている。


木の陰で談笑している母親らしき人が、こらーやめなさーいと諫める気のない声を上げた。

背中を丸めたまま、ああ、夏休みなんだ、と思う。

「マコトって、どうなるんですか」

「どうかな……。お相手さんも意識を取り戻したみたいだし、ひとまずは、ね。でもやっぱり、これから向き合っていかないとね」

弁護士を名乗ったその人は、武装みたいな背広を脱いで膝の上に折り畳んだ。



「……あいつ、世界平和って、言ってませんでしたか?」

幼児がすべり台を声を上げながらすべり、その先に兄だろうか、もう少し大きい男の子が両手を広げて迎える。

これから広がる未来をひとかけらも恐れていないはつらつとした姿を、ぼうっと眺めた。
どうせ来年も来る夏を、刹那のように全身で楽しむ人達がそこに多くいた。



「意味分かんないんですよ、あいつすぐ、世界平和って言うんです」



俺は笑った。ずっと一緒にいた俺よりも、目の前の見知らぬこの人の方が、きっと深くマコトを理解しているんだろう。

やるせなさが胸の奥でくすぶって、小さな煙を立てていた。