「マコトから直接何か聞いたことあるのか?」

「ないない」

「じゃあ何で犯罪者って言うんだよ」

「は?人刺したら犯罪者っしょ。意味分かんない、ダル絡みしてこないでよ」

「だから何で刺したか聞いたのかって!」

裏返った怒鳴り声が教室を切り裂く。

しん、と静まり返った教室に、真実を知る人間は一人もいない。

「なんで何も聞いてねーのに好き勝手言うんだよ!お前も、お前も、お前も、お前も、一体何が分かんだよ何を知ってんだよ!」

喉の奥から絞り出された絶叫は、自分の耳に届く頃にはほとんど悲鳴になっていた。

「お前らみたいな人間は誰かのために何かしたことなんてないだろうが!誰かに代わって自分が犠牲になったことなんてないだろうが!そんなお前らが加害者とか被害者とか勝手に決めつけてんじゃねえよ!」

お前ら、という言葉を、初めて自分に向けて使った。

殴られたみたいに、蹴られたみたいに、心が痛めつけられる。

一体こんな苦しみをどんな思いであいつは背負ってきたのだろう。
何度こんな風に息が出来なくなったのだろう。

「お前らには一生分かんねえよ……」

丸く見開かれた目に囲まれて、俺はいたたまれなくなり鞄を掴んで教室を飛び出した。

呆然と立ち尽くす担任の脇を通る時、唇をぎゅっと結んでぐしゃぐしゃになった岬の顔が視界の隅をかすめた。





校舎の外には、報道の関係の人間があちこちに島を作っており、何か記号のような言葉を叫ぶようにして近づいてきた。

俺は一番そばまで寄ってきた男の肩を突き飛ばし、夏の始まりを振り切るように、家までの道を全速力で駆け抜けた。