「マコト今どうなってんのかな」

「あいつなら知ってんじゃん?仲良いし」

べたべたと不快な言葉が耳に纏わりつくのを、頭を振って落とそうとした。

テストを全て休んだ岬は今日、学校に来た。

「ねえ、マコト今どこいんの?」

加藤が身を乗り出して尋ねてきた。

ねーねー、と体を折り曲げたり伸ばしたりして、そのたびに茶色い前髪のちょんまげが前後に揺れる。
毛先に向かってカールしている艶やかな髪を、カラフルに染めた爪で弄ぶようにいじっている。

視線を岬の背中に移すと、そのポニーテールはまっすぐすとんと真下に降りている。

「なんで無視?意味不明」

加藤が首を捻って、もういいわ、と体の向きを変えた。

担任が何度も詰まりながら「夏休みの注意事項」のプリントを読み上げるのを誰ひとり聞かずに、マコトに関するネットニュースをスマホで見ていた。




「なあ」

思いのほか大きな声が出た。
そのせいだろう、話しかけた加藤以外もこっちを振り返る。

「前、心配してくれたよな?マコトが休んでた時」

俺は思わず立ち上がっていた。
加藤は引いた表情で、座ったまま俺から離れるように分かりやすく身をよじった。

「は?別に心配とかしてないし。犯罪者の仲間みたいな言い方やめて」

歯の奥に力を込める。背景の中で誰かと誰かがぼそぼそと耳打ちを始める。