冷たい部屋の一角……というドラマみたいなことはなくて、俺はパーテーションで区切られた簡易的な応接室のような空間に通された。

肘掛けのついた回転椅子とパイプ椅子が机を挟んで向かい合っており、パイプ椅子の方に腰かけるとギイーと鈍い音が鳴った。

「そっちじゃなくて向こう座りなよ」

若い警察のお兄ちゃんが手で指し示したけれど「こっちでいいです」と言ってそのまま鞄を床に置いた。




どうもどうも、と右手で空気を縦に切るような仕草で、おじいちゃんみたいな風貌の警察官が入ってきた。

小柄でヘラヘラしたその男の人は、顔じゅうに小さな皺を貼り付け、後頭部を豪快に掻きむしりながら笑っていた。

「ごめんねえ、時間とってごめんねえ」

俺は足を開いて座ったまま会釈する。

幅の小さな目を細めて、ここ暑いねえーと優しい口調のまま、四角いボイスレコーダーを机の端に几帳面に置いた。