「なあアキオ」

なに?とキラキラした瞳をゲーム画面に向けて夢中になっているアキオに尋ねます。
格闘キャラが吹っ飛ぶたびに、うわああと間抜けな声を上げて、のけぞったりしています。

「おもしろそう。やらせて」
「次な。死んだらな」

僕も右肘をゲームの機械について、画面を覗きこみました。

やったこともないのに、なぜかアキオよりは上手くやれるような気がしていました。

「で、なんだよ」

アキオは振り返らず尋ねてきます。どうやら話は聞いていたようです。



「お前って、俺のどういうところが好きなわけ?」

「気持ち悪りっ!」

アキオがケタケタと笑い始めました。

ぐわあーと画面の中から叫び声が飛んできて、やべ負けた、コンティニューコンティニュー、と独り言を言いながら、百円玉を細い穴に埋め込みます。
交代してくれる気はないようです。



「別にー?」

なんとなく。そんな声が聞こえた瞬間、ファイト!と画面から出た音が重なって、傷ひとつ無くなったキャラクターが再度現れました。

「お前といるとおもしろいってだけ」

「……なんだよその理由」

僕は言葉を返しました。けれど心はじわじわとあたたかく、なぜだか泣きそうにすらなりました。

今までのどんな称賛よりも心に響いたのです。