「なんか嫌な気分がずっと取れなくて、寝苦しいんだ」

「それ、"あれ"のせいじゃねえの」

あれ、の指すものは理解できても、お互いに口に出せなかった。

クーラーの効きの悪い教室は蒸し暑く、背中にはシャツが汗で貼りついている。

「人の『傷』背負って、お前は損するだけじゃねえか。せめて金とれよ」

「それじゃ本当のカツアゲだろ。人助けにならない」

コトン、と音がして細い腕が二人の前を遮った。

岬がレモンの缶ジュースをマコトの机に置いた。

マコトは微笑んで、ありがとうーと消え入るような声を残して、一口飲むことなくそのまま再び突っ伏した。