「お兄ちゃん?」

ゆっくり、ゆっくり息を吐くと、後ろ頭がさーっと冷んやりしてきて、左胸にある心臓は元の速度まで落ち着いてきました。

「お兄ちゃん?」

睫毛の揺れるそのつぶらな瞳に僕の姿が映ります。
僕には分かりました。さっきの苦しみが、弟の隠した心の中にあったものだと。

あの声はきっと、弟が監督に言われた言葉。

そして胸にはもうあの火の玉はありませんでした。

弟は次の日、元気にサッカーの練習に向かいました。