マコトに遅れて改札を抜けようとした時、ねえ、という声に背中を引き戻された。
「岬」
振り返ったマコトも目を丸くしている。
「きみら、いつも河川敷で何してるの」
ピッと電子音がして、岬が改札を抜けてくる。
「あたし、見たの。何してるの?小学生とか、中学生とかと」
付け加えるその声色は強くて、あれ、もっと控えめな子だと思ってた、とあっけにとられる。
「岬こそ、いつも何読んでるの、本」
マコトが微笑んで尋ねても、「話逸らさないで」と早口で突っぱねた。
「……カツアゲ?」
軽蔑した目を向けられ、俺は慌てる。
胸の前で必死に手を振って否定するのを見て、岬はふふっと吹きだす。
どきり、とした。こんな風に笑うんだ。
「ゲームだよ」
マコトは涼し気な表情で動じない。
「どっちが真の勇者か、我こそはってやつらとサシで挑み合ってるんだ。ただし、手は出さない。にらめっこで勝敗を決めるんだよ。で、笑った方が勝ち、泣いた方が負け」
岬の顔の前に人差し指を突き立てて、訳の分からないことを大真面目に言う。