独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

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葵は須和と過ごしたあの夜から一週間後、都立大学病院の診察室の椅子に座っていた。

「腫瘍が六ミリ大きくなっています。……一刻も早く手術をしなければいけない状態ですね」

「……手術」

三枚の大きなCT写真の前で、若い医師が深刻な表情を浮かべて薄ら髭を触っている。

「お父様から何も聞いていなかったでしょうか? 
きっと先日の検診ではこの結果が伝えられていたはずなんですが」

「え……」

父の利光は先日、脳腫瘍の定期検査を受けたばかりだった。
検診結果に関しては特に何も言っていなかったので、安心していたのだが……。
つい先ほど店で倒れ、近くの大学病院に救急車で運び込まれたのだった。

「あの、父からは良性と聞いていたのですが……」

「良性で間違いないのですが、お父様の腫瘍は脳の中心に有ります。
このまま大きくなり神経を圧迫し続けると、言語障害、運動障害に必ず影響が出てきますね」

「運動障害……嘘...…」

利光の商売道具である手が使えなくなる……それは本人にとってこの上ない辛いことなのではないだろうか。

「あの、手術をすればいいんですよね。じゃあ、今すぐにでも……」

「それが」

さらに医師の表情が深刻さを増す、一息置いて言いずらそうに口を開いた。

「この場所は大変手術が難しい。うちではできません」

「えっ……」