独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む


「……」

(須和さんは、ずるい。私がダメって言うわけないのに)

須和はいつもの様に余裕の笑みを浮かべて、葵を見つめている。

(なんで? 梨々香さんがいるのに……)

「……いやって言ったらどうしますか? 須和さん」

葵は胸に込みあがってきた熱いものを必死に堪え、笑顔を浮かべる。
視界に一瞬だけ須和の傷ついた顔が見えて、ゆっくりと背を向けた。

「葵ちゃん」

「ふふっ、ウソですよ!
いつでもお待ちしてます。須和さんはうちの大切な常連さんですから」

「……」

今まで耳に入ってこなかった雨音が、嘘のようにハッキリと聞こえてくる。
知らないうちに本降りになっていて、今は簡単に外には出れなさそうだ。

「あ、須和さん。栗は平気ですか? 今から栗きんとんをお出ししようと思ってるんですけど」

「うん、平気だよ。ありがとう」

「すぐできますから、待っててくださいね」

須和の顔を直視できない。見たら、泣いてしまいそうだった。

(須和さんの気持ちが全く分からない……)

思わせぶりな態度に、葵はほとほと疲れてしまった。
なのに、きっと傷つけてしまって、申し訳ないと思う自分もいる。

(須和さんには梨々香さんがいる)

呪文のように心の中で唱える。こういう時は、話題をまるっきり変えていくのが一番だ。

「海外でお仕事ってどこに行かれてたんですか?」