利光はハァーッと大きくため息をついたあと、葵を厳しく睨みつけた。
「この馬鹿娘、大学にも進学せずにこの店を継ぐなんて一丁前なことを言ってやがる。
ロクに身の回りのこともできないくせに! 柾からも言ってやってくれ」
「な、何その言い方。私の人生なんだからお父さんにとやかく言われる筋合いはないよ」
(……って、私も火に油を注ぐようなことを)
既にこの件で一年も居心地が悪い日々を過ごしている。
多少憎まれ口を聞かれても、反応しない、それが一番の解決策だと分かっていたのに。
「こいつは誰に食わしてもらってると……」
「おじさん、こんな頼もしい娘さんを持って幸せだね。
女性の和菓子職人か……僕はかっこいいと思うけどな」
「!」
びっくりして葵が須和に目を向けると、彼は感心したようにうんうんと頷いている。
「柾まで何を言ってるんだ。……はぁ、今どきの若いもんは考えが浅すぎる。
付き合いきれんから、俺はもう仕事に戻ることにするよ」
「ちょっとお父さん!」
(いくら仲がいいからって、さすがに須和さんに失礼すぎるよ)
背を向けて歩き出した利光を葵が制止しようとすると、「大丈夫だよ」と優しい言葉が投げかけられた。
「おじさんがちょっと不器用なのは知ってるから、俺全然気にしてないよ。
それに……葵ちゃんのことが大切だからこそ、あんなに怒るんだと思うしね」
「須和さん……」
(普通だったら嫌な気持ちになるはずなのに……)

