独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

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そして、もう一方の須和は……。

「柾君! ほらもっと飲みなさい。今日は君が主役なんだから!!」

「そうですよぉ~さっきから全然減ってないじゃないですかぁ」

会員制高級クラブ“J”で一番人気らしい(・・・)黒髪の美女が、須和の腕にすり寄ってくる。

「……お気遣いありがとうございます。ゆっくり飲むタチなんで気にしないで下さい」

「そうなのぉ? せっかくいいところに来てるんだから、もっと楽しみなさいよ」

建築会社社長の羽柴渉(はしばわたる)は顔を真っ赤にして、両手に美女を抱え込んでいる。

(いいところだって……ここが? さっきから密着してきて、肩が痛いよ)

須和は綺麗な女性に寄りつかれても、全くなびいたりはしない。
というよりも、できないのだ。

自分に近寄ってくる者には裏があることがほとんどで、
最善の注意と警戒心を抱いて接しなくてはならないと思っている。

「はぁ……」

喋るのも億劫でタバコをくゆらせていると、黒髪美女が耳元に唇を寄せてきた。

「今日は梨々香さんいないんですねぇ♥ よかったらこの後、私の家に遊びに来ませんか?」

(……いないとすぐこれだもんな)

ニコニコと笑顔を向けてくる彼女に、須和は優しく微笑みを返す。

「そう言ってくれて嬉しいんだけど……梨々香に悪いから。ごめんね」

「……一途ですよね、須和さんって」

「普通だよ」

少しだけ我慢して表情を作れば、女性たちは舞い上がり何も言えなくなる。

(ああ、帰りたい)

全ては計算づくだ。人の心をつかむのなんて容易い。