独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

(もしかしてこの二年間の間も、そういう人がいたとか?)

一度も考えてみたことがないわけではなかったが、葵は信じたかったのだ。
あえて知ろうともしなかった。

(でも、さっき女の人の腕を振り払ったのが見えたんだけど……)

葵は厨房から呼び寄せた利光と隣り合い、須和たちの前に立った。
居心地の悪さを感じながらも、なんとか笑顔を浮かべる。

「義則しばらくぶりだなぁー! 十年ぶりくらいになるか」

「もうだいぶ経ってしまったね、海外に居たとはいえ、
由紀子さんのお葬式に足を運べず、申し訳なかったよ」

「いいんだよ。大企業のお偉いさんが来たらみんなビックリするだろう」

挨拶が済むと、利光は須和と女性に目をやった。

「柾の隣のべっぴんさんは?」

利光が尋ねると、女性は優しく微笑んで、ほっそりとした手を差し出す。

「ご挨拶が遅れました。私、義則さんと柾さんと一緒にお仕事をしております。
須和第一不動産、営業課の羽柴梨々香(はしばりりか)と申します」

「よ、よろしく頼みます。俺は店主の天馬と申します」

(お父さん、美人を前にすごい上がってるし)

しどろもどろになっている利光を横目で見ていると、葵にも女性の手が差し伸べられた。

「!」

「よろしくおねがいします。葵……さん?でしたっけ」

「あ、はい……! 私はここの和菓子屋の娘で、葵です」

女性はクスッと鼻で笑い、華麗な笑顔を浮かべる。

「可愛らしい。まだ学生さんなのかしら?」

「……いえ。先日二十歳になりました。だから一応成人で……」