独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

「せ……」

真っ先に目に入ったのは、上品なスーツを着ている大柄の男性。
そして……その後ろに華やかな若い男女が見えた。

(えっ、須和さん?)


女性が親し気に腕を組んでいるのは、紛れもなく彼だ。
鼓動が嫌な音を立て始めて、息をするのが苦しくなってくる。

(なんで……)

「君は葵ちゃんだよね? 私のこと覚えていないかな」

「えっ……えっと?」

柔和な笑顔を向けてくる中年の男性に、葵はたじろいだ。
言われてみれば、確かにどこかで見たことがある。

(あれ、この雰囲気って)

「僕の父なんだ、葵ちゃん」

後ろに立っていた須和は、女性の腕を払いのけて笑顔で近づいてきた。
女性は葵に向かって、ぎろりと睨みを利かせる。

「……お父様、ですか?」

「僕たちよく似てるって言われるんだけど、そうでもないかな」

須和はいつも通りの態度で接してくる。
数日前に起きたことは、何もなかったように……。

「……確かに、笑った顔とか似てますね。あ、じゃあお父さん呼んできますっ……」

葵はロクに挨拶もしないまま、逃げるようにしてその場から立ち去った。

(……さっきの女の人って彼女?)

栗色の長い髪に、モデルのような風貌の女性。
視界に入ってきた二人はとてもお似合いで、葵の瞳にカップルとしてハッキリと映し出された。