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二人は食事を終え、店を出た。
すると予定では到着しているはずの運転手がいない。
須和が連絡すると、近くで交通事故があり大渋滞しているとのことだった。

「ごめんね葵ちゃん、結構待たせちゃうかもしれない」

「とんでもないです! 今日は寒くないし、散歩でもして待っていますか?」

「うん、酔い冷ましにそうしようか」

「!」

(……嬉しいな、須和さんと一緒にいれる時間が長くなって)

二人で並んで並木道を歩く。
葵がなんとなしに空を見上げると、綺麗な満月が顔を出していた。

(なんかロマンチックだなぁ)

「須和さん……月が綺麗ですね」

思わず見入っていると、隣からクスッと笑い声が聞こえてきた。

「葵ちゃん、それはどういう意味で言ってるの?」

「え?」

口元に笑みを浮かべる須和はどこか楽しげで、イタズラめいている。
葵はそんな彼の姿に、ドキドキと心臓が高鳴った。

「意味は、特にないです……けど」