切ない思いを胸に秘め、葵は須和と共にヘリコプターに乗り込んだ。
大きなエンジン音と自分の高鳴る心臓の音が重なって、気分が高揚してくる。
「緊張してる?」
「はい、私飛行機も乗ったことないからちょっとだけ怖いです」
「……そっか、じゃあ腕貸してあげる」
須和は握った手を引くと、自分の腕に葵の腕を絡めた。
体が密着し、葵を囲む空気がシトラスの香り一色になる。
(須和さんの香水、いい香りだな……)
「これなら平気?」
「はい……ありがとうございます、須和さん」
チラリと見上げると、須和の横顔が窓の向こうの夜景と重なり、キラキラと輝いていた。
美しくて、眩しくて……葵の思考を停止させる。

