独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

「須和さん……」

「頑張ったね、葵ちゃん。俺はずっと健気に頑張る君を、抱きしめたかったよ」

「……っ」

囁かれた言葉にボロボロと涙が零れて、止めようとしても勝手に溢れてきてしまう。
葵が思わず嗚咽を漏らすと、須和は一層強く抱きしめた。

「辛かった……です……お母さんがいなくなって……」

「うん」

「ずっと、寂しかった……」

(お母さんともっと一緒にいたかった。もっともっと生きていて欲しかった)

優しく包み込む須和の体温は、葵の心まで温めてくれる。
涙を流していると、心の奥底に隠していた思い出たちが鮮明に蘇ってきた。


母が倒れ、父と二人で暮らし始めた日のこと、
初めて和菓子を作った日、母が喜んでくれた日のこと、
母が最期に笑っていた日のこと……。

常に孤独と共存していた思い出は、須和の腕の中であたたかく優しい日々だったように思えた。

「……お母さんに、会いたいです」

ひとしきり涙を流し、呼吸が落ち着いてきた葵はポツリと言葉をこぼす。