独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

扉が開いて早速、葵は目の前に広がる煌びやかな世界に目を見開いた。

ピカピカに磨かれた黒の大理石の床に、シャンデリアの光が反射してきらめいている。
少し奥まった場所に、“Beryy Restaurant”の文字が記された建物があり、一人のギャルソンが立っていた。どうやらフランス料理店らしい。

(すごい、ここだけ別世界みたい……)

二人の存在に気づいたギャルソンが、にこやかな笑顔で歩み寄ってきた。

「須和社長、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

「ああ、よろしく頼むよ。……葵ちゃん、行こう」

「! はい……」

須和は後ろを振り向くなり、葵にいつも通りのにこやかな笑顔を浮かべるが、
ここまでの豪華な振る舞いから、葵は自分が知っている須和とはとてもかけ離れて見えた。

(須和さんが社長さんっていうのは知ってたけど、もしかしたら相当すごい人なのかも)

ギャルソンに通してもらった席は、半個室になっていて、大きな窓ガラスから都内の夜景が一望できた。

「綺麗……ビルの上ってこんな風になってたんだ……」

都内に住んでいれば、誰しも一度や二度東京タワーなどに登ったことがあるのかもしれない。
葵の場合、店がほとんど休みがないため、家族では出かけた記憶がないに等しい。
それに十八年間、恋人もいたことがないので、高い場所に登る機会がなかった。

「……ホント、葵ちゃんを見てるといつも新鮮な気分になるよ」