独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む


若くて美しく、和菓子を世界に広める第一人者として、葵はすっかり有名人だ。

今ではその高い技術を世界中のパティシエが注目し、葵にラブコールを送っている。


(もう僕の出る幕はない)


雑誌では対談式でインタビューが形成されている。

『葵さんはシンガポールに渡り三年間、精力的に活動を続けていますが一番の原動力は何ですか?』

『和菓子を世界に広めたいという思いは常に持っていますが、父と母の作り上げてきた和菓子の味を根絶やしにしたくないという思いが大きいかもしれません』


「……」

やはり、葵は葵だったのだ。

由紀子がこの世におらず、利光も今では好き勝手に生きているというのに。
ずっと二人のことを、“天馬堂”のことを思い続けている。
その家族愛こそ彼女を動かす、一番の原動力なのだ。


『柾さん、大好きです』

葵はよく須和に言った。離れて暮らして三年経った今も。

自分を見つめる眼差し、離したくないとばかりに腕を掴んで震える手は、ずっと変わっていないのだが……。

(葵の一番には、僕は一生なれないのかもしれないな)



葵は須和との交際を公にしようとはしていなかった。

その理由を須和は聞いたことはない。
というよりも、彼自身、その方が都合がいいと思ったからこうしてここまできた。

(もう邪魔ものはいない。いつだって僕は葵と結婚できるというのに、彼女はどう思うんだろうな)