独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

(お母さん……)

由紀子との思い出が蘇りそうになり、葵は急いで思考を停止させた。

気を緩めると、こうして由紀子のことを思い出してしまうので、
忙しくしている方がよっぽどいい。

(何かお茶でも飲もうかな)

バックヤードに一瞬戻ろうとしたその時、ガラッと勢いよくお店の扉が開かれた。

「いらっしゃ……須和さん!」

「葵ちゃん、久しぶり」

一週間ぶりにお店にやって来た須和は、いつものスーツ姿とは違い、
ワイシャツとスラックスという軽やかな出で立ちで現れた。
髪の毛は何も整髪剤をつけておらず、少し長めの前髪から切れ長の瞳が覗く。

「お久しぶりって、まだ一週間ですよ。須和さんは今日はお休みですか?」

「うん、そう。今日は久しぶり休みが取れて、さっきまでぐっすり寝てた」

「ふふっ……さすがに寝すぎじゃないですか」

須和は、由紀子が亡くなってから、よく店にやって来てくれるようになった。
ある時は一週間に一度、仕事で忙しい時は一カ月に一度。
休みがある時は一瞬でも顔を見せに来てくれる。

葵の目から見ても、須和は最後に由紀子としたある約束(・・・・)を気にしているように見えた。

(今日こそは須和さんにちゃんと言わなくちゃ)