独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

葵の言葉を聞くと、須和は視線を落としてネクタイを摘まむ。

「実は閉店の日、お店に駆け付けた時にネクタイピンを店の前で落としたかもしれなくて」

「えっ、そうだったんですか。私見てきます」

「……葵、ごめんね。今日荷物も持ってるし、適当に見てなかったら諦めちゃっていいから」

(きっと柾さんのことだからネクタイピンも高級なんだろうな)

滅多に須和は人に頼み事をしない。葵は信頼されている気がして嬉しくなった。


こうして名残惜しさを感じながらも、葵は須和と一緒に家を出た。
都営バスに乗り、実家の最寄りのバス停に到着する。

(柾さんのネクタイピン、あるといいんだけどな~)

そんなことを思いながら、久しぶりに立ち寄る『天馬堂』に、心躍らせる。

(しばらくこの辺に来てなかったから、街並みを見てても懐かしさを感じるなぁ)

そしてこの角を曲がったら……。


「!?」