独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

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「よし、準備できた」

葵はボストンバックに洋服や雑貨を詰め込んで、ふぅと息を吐いた。

(こんなに大荷物になるとは……)

明日の午前中に、利光が晴れて退院することになった。
この入院期間中の半分以上を須和の家で過ごしていた葵は、私物を実家に持ち帰るために今まで荷造りをしていたのだ。

(さすがにお父さんと暮らしてて、しょっちゅう柾さんのところには行けない)

本当はずっとこのまま暮らしていたい。一日たりとも柾さんと離れたくない。
最近こんなことばかり考えてしまう。

「あー葵が帰っちゃうのか。おじさんが退院するのは嬉しいけど、やっぱり寂しいな」

須和はネクタイを結びながら、葵の手荷物に視線を送る。

「毎日は来れないですけど、週末は遊びに来ます。それでもいいですか?」

葵が念のために聞いてみると、須和はチュッと彼女の唇に口づけた。

「もちろんだよ、またデートに行こう」

(デートかぁ……次はどこがいいかな~)

早々に妄想し始めた葵に須和はクスクスと笑う。

「……あ、そういえば、葵の家までの道のりに天馬堂ってある?」

「いえ、1番近い道では通らないんですけど、
一本裏に入って道を変えれば通ることも出来ます。
どうかしましたか?」