独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

顔を上げた須和は、葵が想像していたよりも明るい声でその事実を伝えた。

「日本じゃなくてシンガポールなんですね。それは大変だなぁ」

葵も笑顔で答える。
正直この話はどこか現実味がない、まだ冗談だと思っている節がある。

「だよね……おじさんもこの話を聞いたらビックリするだろうな。
あれ、そういえばおじさんって海外には行ったことはあるの?」

「多分ないと思いますよ。若いころから仕事で忙しかったし」

葵は言いながら須和の横に腰かけた。
すぐに逞しい腕が伸びてきて、肩を抱き寄せられる。

「……そんなことより柾さん、今日はミッシェルさんに言えませんでしたね」

自分の左手薬指に光る指輪を見つめながら、葵は呟く。

「そうだね。梨々香たちのことを気にしてたら言えなかった。
また改めて僕からミッシェルに伝えるよ」

「はい、宜しくお願いします……」

須和の体温を近くに感じ、葵の身体は安心して力が抜けていく。
ぼんやりとまどろんだ意識の中、葵は思った。

(やっと一緒になれたのに、柾さんと離れるなんて考えられないよ)