独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

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その後、なんとか会は終了し、葵は須和と一緒にレジデンスへと戻っていった。
前のように梨々香や義則に心無い言葉をかけられることこそなかったが、彼らは完全に須和から葵を遠ざけようとしているのが明らかになった。しかも、店を失った葵の弱点を上手くついたタチの悪い戦略で……。

(柾さん、さっきからぼんやりしてるな。きっと天馬堂の件のことだよね)

須和は部屋に戻ってすぐに、ソファに座って何かを考えている。

「……」

葵はまだ須和からちゃんと説明は受けていない。
けれどみんなの会話や様子で、ニッキーが天馬堂の出店を望んでいて、
早く葵に返事をして欲しいということは分かっていた。

正直ありがたい話だ、葵は思った。
仕事がなくなった今、これから家をどう立て直していこうと思っていたところで、
もう一度お店を復活できるのなら、なんでもやった方がいいのではないだろうか。
母、由紀子の多くの人に“天馬堂の味を広める”という夢も、一緒に叶うのかもしれないし。

(それは分かってる……)


「……ねぇ葵。
ニッキーは本気で天馬堂をバックアップしたいんだって。場所はシンガポールだけど」