独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

「天馬様、こちらへどうぞ」

フロントマンの背中を、葵は後ろを見ずについて行く。

(お願い、私について来ないで……)

お店の奥に進んでいくと、大きなガラス窓の向こうに東京の夜景が見えてくる。
一番特等席らしい個室に通されると、ずっと会いたかった人が立っていた。

「葵、お疲れさま」

「柾さん……」

仕事仕様のスーツに身を包んだ須和は、微笑みながら葵に手を振る。
その姿に、彼女は心底ほっとした。

「あの、柾さん……」

葵は言いかけて、ハッとした。
須和の横に立っている白人女性と目が合ったからである。

きっと彼女がミッシェルだろう。四十代と話に聞いているが、もっと若く見えた。
そして彼女の横にもう一人、アジア系の男性が立っている。

今日は、ミッシェルと須和とで三人で会う予定だったのだが……。

(誰だろう?)

「葵、二人を紹介するね。彼女がミッシェル。そしてその隣にいるのが、彼女の現在のビジネスパートナーのニッキー。シンガポールの実業家なんだ。
彼も一緒に来日することになって、折角だから葵の和菓子を見てみたいって。急遽ごめんね」

「そうだったんですね、それは全然」

葵は微笑んで、二人に会釈をした。
英語は話せないので、須和に通訳してもらいながら、簡単に自己紹介をする。

「じゃあ、席に着こう」

そう、須和が言ったその時……。



「あ、いたいた! 柾君!!」