その甲高い声に、葵の背筋が凍る。
遅れて心臓が大きく鳴り始め、息が苦しくなった。
「……梨々香さん。お久しぶりです」
葵はゆっくりと身体を回転させ、目の前に立つ人物にぎこちなく微笑みかけた。
と……梨々香だけがそこに立っていたと思っていたのが、
彼女の横には須和の父親である義則と、初めて見る中肉中背のスーツの男性が立っているではないか。
「葵ちゃん、元気そうじゃないか」
「あ……はい。元気にしていました……」
なんとか答える葵に、義則は柔和な笑顔を向けた。
でも、心が休まることはまずない。彼の裏の顔を知っているからーー。
(何かがおかしい。嫌な予感がする)
三人が自分に向ける視線が痛い。針をチクチク刺されているようだ。

