独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

(須和さんが私のお菓子を……!?)

「そ、そうなんです。お店の営業が終わった後に厨房を貸してもらって、出来の良いものはいつもお母さんにあげていて」

「へぇ……すごいな。
これを見てたら葵ちゃんが真剣に和菓子職人を目指してるのが伝わったよ。
見た目は美しいし、とても美味しそうだ」

「!」

(須和さん、私が職人を目指してること覚えててくれたんだ)

数か月前、一瞬顔を合わせただけだ。
それなのに、須和が些細な会話を覚えてくれていたことが、葵は嬉しかった。

「あ、葵。柾君におひとつ食べてもらったらどう?
なかなか自分が作ったもの、食べてもらう機会ないでしょ」

「確かに。須和さんどうですか……?」

「いいの? じゃあ、お言葉に甘えて」

須和は蝶を模った練り切りを、黒文字でひと口サイズに切って口に含んだ。

(お口に合うといいんだけど……)

不安げな眼差しを葵が向けていると、須和は頷きながら顔をほころばせる。

「……うん、すごく美味しい。甘すぎなくて上品な味わいだね。
求肥(ぎゅうひ)もほどよい柔らかさだし」

「ありがとうございます……!」