何度も下ろそうと試みるけれど、ファスナーはわずかにしか下がってくれず、葵は冷や汗をかいた。

(どうしよう、このままじゃドレスをダメにしちゃうかもしれない)

葵は勇気を出して、更衣室の向こうにいる須和を呼んだ。

「どうしたの? 何かあった?」

「あの……ファスナーが下りなくて……柾さん後ろ見てもらえないですか?」

「! そうなんだ、ちょっと待ってね」

そう言うと須和は扉を開き、葵の後ろに回った。

「ああ、生地が噛んじゃってるから、少しじっとしてて」

「はい……」

(もうさっきから何やってるんだか。そろそろ柾さんに飽きられちゃうよ)

反省しながらジッとしていると、うなじの辺りに時折熱い吐息が掠める。
須和が頭を傾けて背中を熱心に見てくれているだけなのに、なぜか葵の身体が火照ってた。

「……」

「うん、大丈夫そう。生地は外れたよ」

「柾さん、本当にありがとうございます。後は私が……」

葵が言いかけたのと同時に、須和の唇がそっと背中に触れた。

「……っ!!」

「葵はそのままじっとしてて」