独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

「葵なら、天馬堂を発展させてくれるわ」

由紀子の一言にハッとする。顔を上げると由紀子は力なく笑っていた。

「私とお父さんの夢は、もっと沢山の人に天馬堂を知ってもらうこと。
一緒に叶えたかったけど、私は無理そうだから……あとは葵に託したい。
あの子ならやってくれると信じてる。才能も愛される人柄も備わっているから」

「由紀子さん……」

「けど、本当に葵は甘えるのが下手なのよね。多くは私に責任があるのだけど……。
もし、それで空回りしてたら、柾君が助けてやってくれないかしら」

「えっ、僕が?」

「ええ」

由紀子の言葉に戸惑っていると、カラカラと病室の扉が開く音が聞こえてきた。

「ただいま」

「……葵ちゃん、おかえり」

葵は持っていた花瓶を机に置き、ドギマギしつつも須和の隣に腰かける。
目の前で由紀子がニッコリと笑顔を浮かべているので、よけいに居心地が悪い。

「お母さん、何か須和さんに言ったんでしょ」

「ええ、二人とも本当にお似合いよねって話してたわ」

「えっ……」

たちまち顔が赤くなる葵を見て、由紀子と須和が笑い始める。

「大丈夫、何も言われてないよ。
由紀子さんに葵ちゃんが作った和菓子を見せてもらってたんだ。
これはいつもお店が終わった後に作ってるの?」