独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む

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「お母さん、見てみて。これ、昨日作ったやつ」

「まぁ、可愛らしいじゃないの。練り切りも随分上手に作れるようになったわね」

葵は一週間ぶりに母、由紀子の病室に訪れていた。
早速用意していた菓子箱を開き、得意げに一つ一つ説明していく。

「右から桜、鶯、蝶、手毬でしょ……こっちは菜の花をイメージして作ったんだ」

「いいわね、どれも春っぽくて」

世間はすっかり春だ。

葵は半月前、無事に高校を卒業し、今は本腰を入れて店の手伝いをしている。
営業後は店の厨房に籠り、自分でデザインしたものを試行錯誤して作って記録。
なかなか忙しい日々を過ごしていた。


「……葵、ちょっと写真撮るわね」

「うん、どうぞ」

由紀子は枕元にあったスマホを手に取ると、角度を変えて何度も撮影した。
その時間、病を患っていると忘れてしまいそうなほど、由紀子は目を輝かせて笑顔を浮かべている。

(お母さん喜んでくれてよかったな)

抗がん剤の影響で、葵が作ったお菓子を母に食べてもらうことはできない。
けれど、ただ見るだけでも自分が作ったお菓子で元気になってくれる母の姿に、
葵はこの上ない幸せを感じていたのだった。