「――んっ」

ドキドキと暴れる心臓に呼吸は荒くなり、痺れるような感覚に朦朧としながら柚希は思った。

――絡め取られるのは舌だけだ。

「大丈夫だよ、柚希。僕を信じて」

囁く声は天使か、悪魔か。

たとえそのどちらでも、心は奪われない。

心だけは……。

そう思いながら、
観念したように、ゆっくりと体の力を抜いた時。

――って、え?

「あ、あの。キ、キスだけじゃ」

「善は急げってね」

「え、それ、そういう意味じゃな」

抵抗するにはバスローブは無意味だった。

スルリと落ちて剥き出しになる胸。迷わずそこに顔を埋める彼の唇に息を呑んだのもつかの間、自分の口から漏れ出た声に驚いて。

痺れるような、彼から与えられる刺激に逃げたくて逃げられなくて。


「柚希、君は綺麗だ」

その声に我を失った。