なにしろ自分はと言えば、ベリーヒルズに足を踏み入れるだけで気後れしてしまうし、場違い感半端ないのだから。

――でも半年なら?

ゆっくり息を吸って。気持ちを落ち着けて。
思い出した。

それはまだ遠い昔、結婚という未来を夢見ていた頃。
結婚は愛する人とするものだと思っていた。愛する人に愛されて結婚する。お金のためじゃない。

そう、お金のためじゃない。

「そっか、そんなに悩むかぁ。ごめんね、変なこと言って」

ハッとした柚希は、慌てて冬木の言葉を遮った。

「よろしくお願いします! 結婚してください」

四の五の言っている場合じゃない。

祖母のためにもいまはとにかくこの人を頼る以外に、すがる藁すらないのだ。

にんまりと相好を崩した彼はスッと席を立ち、柚希の隣に腰を下ろした。

「さあ、こっちを向いて」

手を伸ばし、頬を包む彼の両手に合わせて横を向くと、彼はにっこりと微笑んだ。

「素直でよろしい」

最初は軽く、触れるように重ねられた唇は、だんだんと熱を帯びてくる。