だいいち、施して頂くだけというわけにもいかない。何かしら対価を払うのは当然で、それがこの貧相な体の提供で済むなら……。

ちらりと心が動く。

――これは、もしや。世にいうところの、あれ?

「もしかして契約結婚っていう、やつですか?」

「そうだね、それだ。じゃあこうしよう、まずは半年間、お試しの結婚」
彼は自分の言った言葉に納得したように、うんうんと頷く。

「半年?」と呟いた柚希は、うーんと唸った。

――半年なら。

柚希の描いている未来に結婚の二文字はなかった。

それはあきらめとか、そういうことではなく本心だし、したいと思ったこともない。

田舎で好きな陶芸だけをする暮らし。それさえあればいいのだから。

普通の結婚なら考えられないけれど、これほどの好条件ならどうだろう。

とはいえ、こんな都会のお金持ちの派手派手しい人の妻になんてなってしまったら、困ることばかりが待ち受けているに違いない。