麗しの彼は、妻に恋をする

「す、すみません。やだなぁ私酔ったみたいで、何を言われているのか」

「愛人やめて、結婚してみようか? 僕と」

「――ケッコン?」

「そう。どう? してみる?」

――聞き間違いではない?

この人と結婚する? 私が?

ようやく柚希は考えるに至った。

とはいえ、おかしな話であることに違いない。
いくら酔っているとはいってもそれくらいの判断はできる。

「えっと、結婚ってそういうふうにノリでするものなんですか?」

「さあ、どうかなぁ。でもほら、結婚は勢いって聞くよね」

彼は小首を傾げてみたものの。ひとり納得するしたようににこにこと邪気のない笑顔を向ける。

「勢い……」

「うん。そう。割といい考えだと思うんだよね。まぁ君には陶芸もあるから普通の結婚というわけにはいかないけど、条件をつけてなら。どう?」

「ほぉ……条件。それはどういう条件ですか?」

「そうだねぇ。僕は毎週月火が休みだから、その日は一緒に過ごそう。それ以外はどうぞお好きに。思う存分、君は作陶を続けたらいい」