麗しの彼は、妻に恋をする

うん、充分にありえる。

などと思いながらバスルームを出た柚希は、これまたフカフカのバスローブを着た。
前回借りたバスローブと同じ物かもしれないが、袖の長さからして、これも男物ではないかと思われる。

――もしかしたら恋人いないの? あんなに素敵な人なのに? あ、別れたばっかりとか?

つくづく謎の多い人だ。

ドライヤーのスイッチを切ると、リビングから歌声が聞こえてきた。

耳を澄ますと聞こえてくるのはネイティブな英語。流れている曲に合わせて、彼が歌っているらしい。

どこか懐かしいような甘い歌声に、つい聞き入ってしまう。

聞けば聞くほどに、心の奥がじわじわと熱くなり、なんだか切なくなってくる。

ついつい聞きほれて、曲が終わりそうな頃になってからようやく柚希は脱衣所を出た。

リビングをそっと覗くと、彼は雑誌を見ているようだった。スーツから着替えたらしい、柔らかそうな部屋着に着替えていた。

「ありがとうございました」

「どーいたしまして。スッキリした?」