麗しの彼は、妻に恋をする

ピカピカで水垢ひとつない大きな鏡に白くてフカフカのマット。
かろうじて靴の中までは汚れていなかったので、床を汚さずに済んだのが救いだ。

売り物のように綺麗な洗濯機に、このまま汚れ入れるのも気が引ける。洗面所で洗い流してから、洗濯機を動かした。

そして広いバスルームで、頭からシャワーを浴びる。

――あぁ、気持ちいい。

ボディソープの他にシャンプーもお借りした。

男性用なのだろうか。
スッキリと切れのいい香りが心地よい。

そういえば。彼には、恋人とかいないのだろうかとふと思った

洗面所に歯ブラシはあったけれども、一つだけ。バスルームにも女性物らしき物はなにもない。

恋人がいないはずはないと思う。

どこを切っても金太郎飴のようにモテる要素しかない人なのだから、女性たちがほっておくはずがない。

――でも、もし恋人がいたらこんなふうに女性を部屋に入れて、シャワーまで貸してくれたりするのだろうか?

え? もしかしたら私は女性という枠には入っていないのかも?