麗しの彼は、妻に恋をする

「ダーメ。綺麗にしないとご飯も美味しくないよ?」

彼は、ほらと言ってバスローブを柚希の手に乗せる。

「鰻と寿司、どっちがいいの?」

「えっと、えっと。では、う、鰻を」

「はいはい。バスルームはそっち、バスタオルは棚にあるから好きなだけ使って」

シッシッと追い立てられるようにして、柚希はバスルームに向った。

「洗える服は洗濯機で洗濯してね。食事が終わる頃には乾くでしょ」

そう呼びかける彼の声に「すみません、ありがとうございます」と大きく返事をする。

――まいったなあ。