麗しの彼は、妻に恋をする

これで十日も放置していた粗相は、多少なりとも挽回できるだろうか。
してもらわないと困るのだ。

「お願いしますっ。許して」

一万円札を入れた熨斗袋に念を送り、柚希は緊張した面持ちで冬木陶苑に向かった。



受付にいた女性は柚希のことを覚えていてくれていた。

「専務は出かけていて。そのまま戻らない予定なんですが、連絡してみましょうか?」

「いえいえ、大丈夫です。申し訳ないのですが、冬木専務にお渡しして頂いてもよろしいでしょうか。お礼に来るのが遅くなってしまって、本当に申し訳ありませんでしたと、お伝えしていただければ」

「はい。わかりました。伝えておきますね」

よかった。
彼はいなかったと胸をなでおろしながら、深々と頭を下げた。
顔を合わせるのは、さすがに気まずかったから。

さて。もし彼が居た場合は挨拶を済ませたらそのまま帰ろうと思っていたけれど、いないとわかれば話は違う。

せっかくの機会だ。少しくらいまた見学してみたい。