麗しの彼は、妻に恋をする

「そういえば柚希さん、恋人はいないんですか?」

「え? いない、いない」
ブルブルと首を左右に振りながら、ふと。愛人ならできるかも? と彼のことが脳裏をよぎり、慌てて振り消した。

「柚希さんモテるでしょうに」

「あはは、ありがと。でも、モテたことなんてないよぉ。そんなこと初めて言われた」

「肌も白くて綺麗だし、声だってすっごく可愛らしいし、スタイルだっていいし、モテない理由がないですよ」

「またまたぁ、うまいなぁ。でもありがとうね」

肌が白いのは小屋に引き籠って作陶しているからだし、タヌキと話をするくらいだから声も細いし、食うに困って痩せているだけだ。

マルちゃんもわかっているだろうに、最後だから気遣ってくれるのだろう。

「もしかして、出会いがないんですか?」

「出会い? うん。ないかな。男の人どころか、ひと月くらい誰ともしゃべったことなかったりするし」

「まじですか? でも結構、田舎に籠っている陶芸家の人ってそうですよねぇ。仙人みたいな」