麗しの彼は、妻に恋をする

『よかったですね! 柚希さん。それだってパトロンってことじゃないですか』
マルちゃんはそう喜んでくれた。

パトロンになってくれと直訴するとは、マルちゃんだって本気では思っていなかっただろうし、もちろん言えなかった。
今更ながら、なんて馬鹿な事をしたんだろうと、柚希は後悔しきりである。

なにしろ訴えただけじゃない。
空腹で倒れて、彼の部屋で休ませてもらって、あげくにパトロンは駄目だったけど愛人の話ならもらったなんて。

『よく考えて、答えが出たら、個展の最終日ここに泊まりにおいで』

――ありえない、ありえない。

思い出した柚希はブルブルと体を震わせた。

『で、では。あ、愛人で、お願いします』
どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。

場の雰囲気にのまれてしまったのか、彼の魅力に憑りつかれてしまったのか。

自分でもよくわからないが、多分マカロンに気を取られていたのだろうと思う。

それくらいマカロンは美味しかったけれど。

――ああ、情けない。
天国にいるママも、さぞかし嘆いているだろうなぁ。

「はぁ」