冬木家は、美術品を扱う名家として長い歴史がある。

美しいものをこよなく愛してきた先祖たちは、美しい女性たちを愛し、妻や妾にしてきたと聞いたことがあるが、彼を見ればそれも納得というもの。
冬木家の美の遺伝子を受けついた彼は、子供の頃から女性に間違われるほど綺麗な容姿をしている。

黙っていても微笑みを浮かべているような面差しであるし、話し方も優しい。
彼が醸し出す佇まいは、どこまでも穏やかで柔らかだ。

和葵と夏目との出会いは共にランドセルを背負っていた頃である。

夏目の父はそれなりに著名な画家で、和葵の父と親しかったことから時々親に連れられて冬木家を訪ね、和葵がいれば一緒に遊んだ。

夏目自身は芸術の道を歩まず、大学卒業後は総合商社に就職したが、三年前、和葵に誘われて総合商社を退職し、冬木陶苑に入社して彼の秘書となった。

そんなわけで夏目は、幼き頃から女性に囲まれる彼を、ずっと見ている。

彼は、プレイボーイと言われるような女好きなわけではない。