「は、はい。そう、その通りです」

少なくとも柚希は大いに貧乏だ。
自分だけじゃない。地元に帰れば何を食べて生きているんだかわからないような陶芸家がぞろりといるのだから、自信をもって同意できた。
「大いに、お金に困っています」

華子さんは満足そうに口角を上げて、ニッコリと頷いた。

「インターネットなんかを利用してファンを増やすことも大切なことだけれど、まず目指すべきは、パトロンを見つけること。わかる?」

「はい」

「こういう物をポンポン買ってくれるようなパトロン」

紫色に塗られた爪で彼女が指すのは、
一万五千円の値をつけたお気に入りの大皿と三万円の花器だ。

売れるとは思っていないけれど、見栄えがするので持って来た柚希自慢の作品である。

柚希にも少なからずファンはいる。

でも彼女が言う通り、実際に売れるのは千円から三千円くらいまでの食器だ。あとは箸置きと、革紐をつけた小さな陶器のネックレスとか。
一万円を超える作品は、年に数えるほどしか売れない。