荷物を渡して身軽になったところで、あらためて見学させてもらうことにした。

自分には出せない色や、繊細な形。
夢中になって展示されている器を見ていると、お腹が悲しげな音を立てた。

朝から何も食べていない。
店で貰ったお煎餅はお腹が鳴った時に食べようと思って大事にしまい込んでしまったし、そのバッグは店に置いたままだ。

個展の準備に夢中で、最近まともな食事をしていない。
胃袋だっていい加減何かほしいだろう。

――ごめんよ。夕ご飯はお祖母ちゃんの手作り料理を思う存分食べられるからね。

なだめるようにお腹を撫でていると、先程の綺麗な受付の女性が声をかけてくれた。

「専務、戻りましたよ」

「あ、はい。ありがとうございます」

入口を振り返ると、彼はまだ外にいて、車の前で誰かと話をしている。

女性にペコリと頭を下げた柚希は、慌てて外へ出た。

――まずはお礼を、そして次は、えっと……。

がんばれ! とにかくがんばれ! 私。