『冬木さんに距離は関係ないと思うよ? 有名陶芸家がいるところにはどこだって足を運んでるだろうし』

芳生にそう言われたし、実際にそうだ。
彼は国内と言わず海外へもでかける。

あまりに遠くから来たとなると、かえって人の口に登るかもしれない。
益子と笠間なら陶芸家の往来と日常のことなので、目立つこともないと思えた。

要するに和葵から見つからないように、姿を隠せばいいのだから、距離は問題じゃない。

でも、一番の理由は、いざとなると遠くへ行く自信がなかったのだ。
祖母から、これ以上は離れたくない。
離婚のことは笠間に着いてから電話で話そうと思っているが、そのことを考えると辛かった……。

「さて、これでよし、と」

思い気持ちを振り切り、最後の荷物の紙袋を置いて、玄関の鍵をかけた。


「よし、じゃあ行くか」

「はい。お願いします」

芳生も軽トラックで来ている。
それぞれに荷物を載せていて、柚希は、芳生の後ろから付いていくことになっていた。

芳生の軽トラックの荷台に見えるのはタンス、テーブル、食器棚などなど。柚希の方には段ボールの数々。
どれも大きな物ではないけれど意外とあるものだ。