ふざけあって笑いあって。
本当に夢のような毎日だった。

この想い出があれば生きていけるよね? 私。

彼の幸せを守るためだと思えば、いくらだって辛抱できる。

――だから、これでいい。

ようやく彼のために力になることができたのだから。

別れが辛ければ辛いほど意味がある。
悲しみを伴わなければ意味がない。

もしかしたら、彼の隣にいてはいけないのだと、誰かに言ってもらうことを待っていたのかもしれないとも思えた。

ジルに肩を押されてホロリと落ちた、胸の奥で違和感を持って巣食っていた何か。

涙が溢れるのに、どこかホッとしている自分は、意気地なしなんだろう。

これでいいと思いながら、ごめんなさいと呟いた。

なぜ、謝るのか。自分でもわからない。

彼は離婚届を受け取ってどう思うのだろう……。

『柚希、愛しているよ』
そう言ってくれた彼。

「ごめんね、和葵さん」

柚希の頬を伝った涙が、ポトリと枕に落ちた。